2018年11月14日水曜日

小説 『知花とイミー』~未知との遭遇~

登場人物:知花、イミー
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知花は、思い悩んでいた。


「わたしには、生きる価値があるんだろうか」


知花は、13才の中学生の女の子。

学校の勉強には、まったく興味が持てず、思い悩んでいたのだ。


「みんなが勉強しているのだから、わたしも勉強しなきゃ」

「でも、何が楽しいのか全然わからない」

「学校をさぼりたいなぁ」


知花は、決して勉強ができないわけではない。親からも、担任の先生からも、やればできる子と、太鼓判を押されている。

でも、やれないのである。勉強をするくらいなら、好きな本を読んでいたほうが”まし”なのだ。


「学校から、テストがなくなってくれないかなぁ」

「いい点取らないと、親がガミガミうるさいんだよなぁ」


こんな調子なので、毎日、うつうつとした日々を送っていたのである。

そんなある日、下校途中で宇宙人と出会ったのだ。

全身毛むくじゃらの、人形みたいな生物で、名前をイミ―といった。


「どうしちゃったんだい?お嬢ちゃん浮かない顔して」


なぜかこの宇宙人は、わるい生物ではない気がして、悩み事を相談してしまう知花だった。


「勉強が好きではなくて、思い悩んでいたんです」

「わたしには、生きる価値があるのかって...」


イミーは、笑いながら答えた。


「勉強に意味なんてないよ、好きじゃないなら仕方がないさ、はっはーっ」

「それに、お嬢ちゃんには、ちゃんと価値があるから大丈夫」


知花は、とっさに返した。


「どうして、わたしには価値があると思うの?ねぇ、教えてちょうだい」


イミーは、答えた。


「簡単なことさ、ボクが価値があると思ったからだよ」

「それだけさ」

「くわーっかっかっかっ」


知花は、なんだかよく分からない、この宇宙人が少し好きになった。


「でも、わたしは、テストでいい点を取れないから親にはよく思われてないわ」

「親には、価値があると思われてないのよ」


知花は、前回の期末テストの答案を親に見せて、説教されたことを思い出した。


イミーは、続ける。


「親は、君の将来を心配してるんだろうね」

「でも、大事なことがなにも分かってない」

「テストでいい点を取ることが勉強じゃない。勉強して、きみがなにを学んだのかってことが大事なんだ」


知花は、少し納得した。


「学ぶことが、大事なの?じゃあテストでいい点を取れなくてもいいの?」


イミーは、答える。


「ちゃんと、自分で考えて意味を読み取ろうとすることが大事なんだ」

「考える力をつけていけば、自然とテストの点は取れるようになるよ」


知花は、勉強するときに覚えることに必死で、なにも考えていなかった。


「そうか、覚えることが勉強だと思っていたけど、そうじゃないんだ」

「考えることが、勉強なんだわ」

「イミーありがとう」

「大事なことを教わった気がするわ」


イミーは、そわそわしていた。


「いけねっ、宇宙船に帰らなきゃ」

「くわーっかっかっかっ、ばいばい、またねぇ」


知花、13才の夏、未知との遭遇であった。


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